取材協力:2018.5
Excelと同じという現場の安心感がSalesforce運用の鍵だった
株式会社 レスメッド様
※ 事例記事の内容や担当者所属は取材当時のものです。最新の情報と異なる場合がございますのでご了承ください。
医師のビジネスは多岐にわたります。大学病院の医局で働く。開業して自分が経営者になる。専門科の技術習得のため転院する。研究者としてより良い治療方法を模索する。このような医師のビジネスを全方位で支えているのがレスメッド様です。法規から税制まで医業全般に深い知識を持つエキスパートが、自分の担当する医師と長く付き合い、転院や開業、M&A、経営再建に至るまでのあらゆる相談に応じる医療コンサルタントは業界でも稀有な存在とのこと。
本事例では、これまでITシステムを利用せずExcelですべての業務を処理していたレスメッド様がSalesforceを導入するにあたり、現場で生じた導入への不安とそれをどのように乗り越えたのかをご紹介します。お話を伺ったのは、医療コンサルティング部の竹内圭一郎様。ご本人も医療コンサルタントとして業務を遂行する傍らSalesforceの構築を担当。現場業務に合わせつつSalesforceで情報を管理・運用するには「RaySheet」が重要な役割を果たしたそうです。
Salesforce導入の課題
- Excel感覚の操作性をSalesforceに組み合わせること。
- Excelと同じように必要なレコード数だけコピーしてその場で編集が可能。
医療コンサルタントの業務とは?
開業支援や勤務先の選定、経営改善の相談など医師から相談されるすべてのことに対応しています。担当する医師から電話やメールあるいは直接面会するなどして持ちかけられた内容が商談としてまとまれば受注に至るという感じです。なので、案件はさまざまです。勤務先を探している医師には勤務先を、医師を募集している病院には医師を、開業を検討している医師には土地建物の物件提案から医療法務・税金・行政までを行います。商談までの進捗はその医師を担当する医療コンサルタントが管理します。相談内容が変わっても担当者は常に同じなので、ITシステムで進捗を入力して情報をチームで共有するといったような情報管理はしていませんし、顧客管理や受注・請求管理もすべてExcelでした。案件が増えビジネス全体が拡張するに従って管理システムが必要ということでSalesforce導入が決まりましたが、当初は積極的な利用に至るほどでありませんでした。
なぜSalesforceが利用されなかったのか ー Excel画面の安心感とSalesforce
Salesforceは顧客管理や商談管理の仕組みがはじめから揃っていますし、業務フローに合わせたカスタマイズも柔軟なので、速く業務システムを組み上げることができます。ただ、これまで行ってきたExcelによるファイルベースでの業務管理とは大きな違いがありました。システムを運用する側の感覚的な問題ではありますが、登録したデータの「見え方」がファイルベースのExcelとSalesforceのようなデータベースでは、ずいぶんと異なります。
入力者の目線ではSalesforceで1件の商談データを登録して保存ボタンをクリックするとそのデータは画面から消えてなくなります。実際は見えなくなっただけでデータベースに格納されただけなのですが、その概念がないと消えてしまったように感じますし、直前に入力したものを参照しながら入力を行う事ができません。登録したデータはビューやレポートで確認できますが、その方法は新たに学習しなければなりません。
一方、Excelの場合は入力したものは消えずにずっと見えています。データを探す場合も、見えているデータを絞り込んだり検索したりするという方法です。単に操作性に慣れ親しんでいるということなのかもしれませんが、やはりデータが見えているという安心感がある。この違いがSalesforce積極的利用には至らなかった原因だと思います。当時はテスト導入ぐらいの時期だったこともあり、使われないままになっていました。私がSalesforce担当になったのはこの頃です。
どのようにSalesforceの運用を軌道にのせたのでしょう?
Salesforceを導入したとしても、従来のExcelのように業務を回したい。というところから再スタートしました。私自身IT未経験だったので、まずはセールスフォースの営業に相談し、入門編のセミナーを受講することに。すると、セミナーの第一声で「SalesforceをExcelのように使おうとすると必ず失敗します」と言われて愕然。どうしようかと困っていたところ、SalesforceがExcelのような画面になる「RaySheet」があると分かり、ようやくSalesforceへの移行を本格的に検討できるようになりました。
RaySheetはSalesforceのデータがExcelの「行」として表示されますし、データフィルタや検索もExcelと同じようにできるので、前述したような「データが見えなくなる」「ビューやレポートの作り方を学習しなければならない」という不安を解消してくれました。これがなければSalesforceに馴染めないスタッフを巻き込んでの運用はできなかっただろうと思います。
それからはプレミアムプランを利用してセールスフォースの技術者に教えてもらいながら自社の業務フローに合わせたカスタマイズをSalesforce環境に実装しました。
案件の入力方法や顧客情報の見え方が従来のExcelのようにできるようになったおかげで画面に対する抵抗がなくなり、Salesforceに医療コンサルタントが各自の担当案件を入力するようになりました。
各医療コンサルタントが、自分の顧客の相談をすべて受け持つという業務スタイルに変わりはないのですが、案件毎の進捗がSalesforceに入力されることでステータス管理ができるようになり、意思決定者やマネージメント層が商談案件全体を見通すことができるようになりました。経営層がビジネス全体を把握し、業績管理ができるようになったことは大きな成果だと思います。今は顧客管理から商談案件管理、受注管理をSalesforceで運用しています。請求書処理などがExcel業務として残っていますが、これもSalesforceに移行予定です。
入力工数が8分の1に。RaySheetの導入効果
Salesforceは顧客や案件に対する動きの流れを把握するのにとても優れていますが、データ全体を感覚的に絞り込んで俯瞰したりメンテナンスしたりするのが難しいです。RaySheetはExcelと同じ感覚でこの点をちょうどよく補ってくれます。両者を組み合わせて使うといろいろ工夫のアイデアが湧いて「化学反応」が起きるようです。
現在最も多い案件の種類は、病院の医師募集案件や医師の勤務先紹介希望案件なのですが、毎日大量の案件を入力するので、RaySheetは入力作業の省力化に大きな効果があります。前述のように商談案件は医師からの相談で発生します。相談はメールや電話、対面で受けますが1日100〜120件の登録作業が発生しています。この作業をSalesforce標準の画面で行おうとすると、詳細画面で必要項目を入力後、データをコピーし再び詳細画面で項目を変更して保存という作業を毎日100〜120回繰り返すことになります。でも、RaySheetでの入力であれば、Excelと同じように必要なレコード数だけ行をコピーしてその場面上で編集できるので、非常に効率が良いです。
例えば求人案件リストで「昨日までの案件全部に無効フラグを付ける」という時、RaySheetだと日付でリストを絞って、1ヶ所だけチェックボックスをクリックしたら後はドラッグフィルで一括コピーするだけでできてしまう。
さらに、データを修正するときの検索もExcelと同じように、複数の候補をチェックボックスだけで絞れるのもよいですね。求人条件で「腎臓内科」と「内分泌内科」はセットにすることが多いのですが、RaySheetだとチェックボックスだけで選択できるので助かります。Salesforceのレポートでこうした条件設定を毎回するのは、相当の手間になりますし感覚的に画面を作れないので。結果としてSalesforce標準で同じ作業をするのと比べると、8分の1の時間ですみます。
Salesforce + RaySheetの導入効果
- 1日100~120件の案件入力工数がSalesforceの標準機能と比べて1/8
- データ全体の見通しやデータメンテナンスがやりやすく直観的
- 両者を併用することで、新しい業務の工夫につながる可能性
RaySheetに対する今後の期待
グラフ・チャートがExcelのようにすばやくできると良いですね。Salesforceのグラフ・チャートは見た目もきれいなのですが、グラフを作るためのレポートを準備しなければならないなど準備が必要なので、すぐにデータの視覚化を求められるときに対応できないです。あとは、実践的な事例集や活用集があると、今後のSalesforce活用も進んでいくと思います。