※ 株式会社セールスフォース・ドットコムは2022年2月1日付で社名を「株式会社セールスフォース・ジャパン」に変更しました。
取材協力:2019.12
RaySheetとRayBarcodeで児童の入退室から請求処理までをSalesforceで一元管理。入力にかかる作業コストを大幅に削減
特定非営利活動法人放課後NPOアフタースクール様
※ 事例記事の内容や担当者所属は取材当時のものです。最新の情報と異なる場合がございますのでご了承ください。
特定非営利活動法人放課後NPOアフタースクールは、日本の子どもたちに放課後の安心・安全な環境と、一人ひとりがのびのびと遊びや学びに夢中になれる時間を地域社会と共につくっているNPO法人です。
保護者の就労状況によって学童保育を利用できない地域も多くあり、待機学童児童も年々増加するなど子育て世帯を取り巻く社会課題は深刻化しています。昔は自由に遊べた街の公園も、事件の増加や大人の都合で制限が強く、今子どもたちの放課後の居場所がなくなってきているのです。
このような社会の課題に応えるために、放課後NPOアフタースクールでは施設利用料がかからず比較的セキュアな環境である学校という場所を活用し、子どもたちが好きなことをして時間を過ごせる場を提供しています。
放課後NPOアフタースクールは2009年に設立されました。代表の平岩様は2005年からこの活動を始め、現在は首都圏を中心に20校のアフタースクールを開校してきましたが、年を追うごとに契約する学校の数が増え従来の方法ではデータ管理が難しくなったそうです。そこで事業拡大を見据え、4年ほど前にWebからの問い合わせ案件を管理するために導入したSalesforceで業務管理を一元化する方針を決め、同時にRaySheetとRayBarcodeを導入したとのこと。2019年の9月から実運用を開始しています。今回は、その採用に至るまでの経緯と導入効果について、特定非営利活動法人放課後NPOアフタースクール 理事・チーフマネジャーの有坂絢子様と本部 事務局の栗林真由美様にお話を伺いました。
【課題】アフタースクールの利用者数が増えて運用でカバーしきれなくなった
放課後NPOアフタースクールがSalesforceを導入したのは4年前。Webからの問い合わせを案件として管理できるようにしました。導入に際しては「Salesforceプロボノ支援プログラム」により株式会社セールスフォース・ドットコムの藤本幸祐氏の協力を得られたそうです。
株式会社セールスフォース・ドットコムでは、「1-1-1」という社会貢献モデルを採用しています。製品の1%、株式の1%、就業時間の1%を活用してコミュニティに貢献するというもので、「Salesforceプロボノ支援プログラム」もその活動の一環です。Salesforceは問い合わせ管理に利用していましたが、それ以外の業務には波及していませんでした。
もともと放課後NPOアフタースクールでは預かり保育事業者向けの管理システムパッケージを利用して、児童の入退室管理や利用者管理、請求管理を行っていましたが運営するアフタースクールが増えてきたことで、管理システムに課題が浮上。現在、私立の10校にアフタースクールのサービスを展開しているのですが、それぞれの学校の特性や要望に応じてシステムをカスタマイズしたため、各アフタースクールごとにシステムアカウントがあり、そのデータベースが独立しているうえ、仕様も異なっていたことで拡張性やデータの一元性がなくなってしまったのです。
「この10年間で少しずつアフタースクールの開校数が増えて、その都度システムを最適化した結果、無理が生じたのです。これだけ規模が大きくなると、本部ですべての拠点の情報を集約することが困難になりました。また、料金体系の仕組みを変えたいと考えた時に、それぞれで仕様が違うので、影響範囲を調べるのも手間がかかります。なかなか、フレキシブルにならないという悩みがありました」(有坂様)
パッケージのカスタマイズでは業務が回らなくなり、それを運用でカバーしていたため現場のスタッフが手作業で行う範囲が多かったそう。例えば、入退室管理では児童が入退室用のICカードをアフタースクールの入室時に認証させると、ログが記録され保護者にメールが届く仕組みなのですが、その入退室データはサービスの利用実績情報のデータベースと紐付いていないため、利用時間(在室時間)に基づく請求金額の算出を自動化できずスタッフが毎日、紙の名簿を見ながらシステムに利用実績を手入力しなければならないなどの作業が生じていたとのこと。
入退室の時に利用するICカードのコストもネックでした。従来は1枚500円程度かかっていたのですが、管理する生徒数が5,000人を超え、将来を見据えるとコストダウンが必要になるという課題も出てきたのです。
Salesforce + RaySheet・RayBarcode導入前の課題
- データベースが分断され全体を本部で把握するのが難しかった
- 利用料を算出するための出欠実績を現場スタッフが手作業で入力していた
- 児童の入退室認証に使うICカードのコストが高い
【導入】Excelライクの見た目で使いやすそうなので導入を決めた
児童の入退室管理から請求管理までを一元化するために、Salesforceを本格的に活用することになりました。以前から支援してくださっている株式会社セールスフォース・ドットコムの藤本氏に相談し、開発が必要なところは、外部の開発会社にお願いしました。RaySheetとRayBarcodeの導入もこのときに決まったそうです。Salesforceのデータ入力をExcelライクに行えるRaySheetはデータ入力と編集の効率化に、RayBarcodeはICカードでの入室管理をバーコードに置き換える目的で採用しました。
「以前からレコードをSalesforceに更新する時に、データローダーでは項目のマッピングなど初期設定が毎回大変だと感じていました。もう少しメンテナンスしやすいツールはないですか、と藤本さんに相談したところ、紹介されたのがRaySheetです。Excelのような見た目と、コピペができて、使い勝手がよさそうだったので、すぐに導入しました」(栗林様)
入退室管理については、それまで運用していたパッケージシステムとICカードの連携運用で機能面での課題はなかったそうですが、ICカードは1枚当たり500円と高額なため、より安価でシールに印刷するコストだけで済むバーコードでの管理を採用。Salesforce内のデータをバーコード化したり、専用モバイルアプリでバーコードを読み取ってSalesforceのデータと照合したりすることが容易にできるRayBarcodeの導入が決まりました。このときも藤本氏が提案してくれたそうです。
具体的な運用方法は、各アフタースクールの受付にRayBarcodeに付属する無料のモバイルアプリをインストールしたタブレットを設置して、利用者(児童)にはSalesforceから発番したIDをバーコード化し、シールに印刷したものをプラスチックカードに貼り配布。児童がアフタースクールに入室する時にバーコードをタブレットにかざすと、Salesforce上に該当する児童の入室時刻が記録され保護者には入室を報告するメールが送信されるというもの。退室時も同じ処理です。この時刻からサービス利用実績を算出できるので、以前のように出席簿を紙で管理しシステムに再入力する手間がなくなり、Salesforce上で利用実績に応じた請求金額の算出までを一元化できるようになりました。
「RayBarcodeは使う用途が明確になっており、そこにぴったりの提案をしていただいたので、導入に際しては特にトラブルはありませんでした。現場のスタッフも違和感なく使えており、子どもも導入初日からすぐに使えるようになっていました」(栗林様)
【導入効果】作業時間の大幅な短縮とカードのコストダウンを達成
Salesforceに置き換えたシステムは2019年9月の本番稼働後から、すぐに効果が出ました。例えば、従来はその日にアフタースクールを利用する児童の入退室時間が書かれた出席簿をパッケージシステムから印刷して、利用実績として別画面に再入力していたのですが、Salesforceで一元化したことでその作業自体が不要になりました。さらに、月末の締め作業は、30分から10分に短縮。1拠点で月に6時間程度の時短が実現したそうです。
「本番リリース前からRaySheetを導入しておいて良かったなと思いました。以前のシステムからのデータ移行だけでなく、リリース直後は仕様が安定しなかったり、入力データに不備があったりして、データのクリーニングをしなければならなくなりましたが、その際もRaySheetで必要なレコードを表示させて一括でデータ修正ができたので手間がかかりませんでした。
あと、Salesforceのレポートでは、事前にレポートタイプで定義されたオブジェクトの項目しか一覧表示できないという制約があるのですが、RaySheetだと参照関連にあるオブジェクトすべてを1画面で表示できるうえ、データ編集もできるので凄く便利でした。例えば、予約情報を変更するときに、そのお子様の詳細情報も参照しながら更新したいとか、特定の条件に該当するお子様の情報だけ予約情報を更新したいということがあるときに、RaySheetだと並べてフィルターして、更新できるのです」(栗林様)
ほかにも、拠点が離れているため拠点間の情報共有が進まないという課題があったそうですが、Salesforceで情報を管理することで、ノウハウを一元化できたそうです。
もちろん、RayBarcodeの導入効果もばっちりです。ICカードは1枚500円ですが、バーコードは、シールと印刷代だけなので1枚数円まで落とし込むことができました。現在は、そのシールを使わなくなったICカードに貼って利用しているそうです。
最後に、今後の展望について伺いました。
「現状、自治体が運用する子どもの放課後の居場所で現場が簡単に利用しやすい管理アプリケーションがほとんどないという課題があります。そこで、今私たちが使っているシステムの機能をシンプルにして使えるようにすれば、コストを抑えながら管理できるようになると思います。
私たちの活動を通して、どうやったら地域の子ども達が豊かな放課後の時間を過ごせるかというコンサルテーション事業も一緒にやっているので、そこと絡めて、業務改善のシステムとセットで提案できるようになると、より本質的な課題解決を後押しできると思います」と栗林様は語ってくれました。
Salesforceにリプレイス後の効果
- RaySheetの導入効果
業務上関連のあるデータを1画面で確認しながら編集できるので、抜け/漏れがなくなり効率も上がった - RayBarcodeの導入効果
RayBarcodeにより、Salesforce内で、顧客管理からアフタースクールの入退室管理を一元化できたことで作業コストの削減と実績の可視化を実現できた