取材協力:2025.11
進捗状況の可視化でメール作成時間を年間約183日分削減
社内外のコミュニケーション基盤として効果を実感
三菱地所リアルエステートサービス株式会社様
※ 事例記事の内容や担当者所属は取材当時のものです。最新の情報と異なる場合がございますのでご了承ください。
不動産サービス事業を幅広く展開する三菱地所リアルエステートサービス株式会社は、顧客管理・営業支援を目的として2014年にSalesforceを導入。その後、活用範囲を拡大し、原状回復工事の進捗管理を一元化・効率化する方針を打ち出したものの、Salesforceに不慣れな現場で利用が進まないという懸念があった。
そこで同社は、Excelライクに使えるRaySheetをあわせて導入。定着化に成功し、結果としてメール作成時間を年間約183日分削減するなど大きな成果を挙げた。RaySheetの導入の経緯や活用法について、住宅運営部の西海舞子氏(現在の所属は賃貸業務部)、住宅運営部 副主事の早川詩音氏、デジタル戦略部 次長の打田大輔氏、同部 主事の石井健太氏にお話をうかがった。
【課題】Salesforceの活用範囲拡大を決めるも、不慣れなUIで現場に定着しない可能性を危惧
三菱地所リアルエステートサービスは、総合不動産業を営む三菱地所グループ会社として、主に法人顧客を対象に、不動産の売買仲介、オフィスの移転仲介、コンサルティング事業、不動産鑑定、およびビル・住宅の賃貸事業など、不動産サービス事業を幅広く展開している。中でも長年力を注いできたのが、企業価値最大化のための「CRE戦略」のコンサルティングだ。不動産の有効活用で社会に貢献する、というミッションを掲げる同社は、グループ64社のリソースと全国に広がるネットワークを活かし、多くの法人顧客に対して、不動産の最有効活用による企業価値の最大化をサポートしてきた。
同社はそうした対外活動のかたわら、自社のDX推進と業務改革にも積極的に取り組んできた。その一環として2014年に着手したのが、Salesforceの全社導入だ。同社はまず、顧客・名刺管理などのCRM領域からSalesforceの利用を始め、続いて商談・売上管理といったSFA領域へと活用範囲を拡大。顧客・商談情報が共有されない、議事録が残らない、といった懸案事項を次々に解決していった。
「原状回復工事」に関する業務フローの進捗管理を一元化する取り組みもその1つだ。住宅運営部や住宅管理部では、顧客の解約・退去時に賃貸物件を入居前の状態に戻す原状回復工事について、外部の工事業者とのやり取りを長年メールとExcelで行ってきた。その工数は膨大で、年間約1,400件の工事案件に対し、年間約3万3000件のメールでのやり取りが発生していた、と賃貸業務部の西海舞子氏は振り返る。
「解約の通知から工事完了の報告まで、全工程のやり取りを人力のメールで行っていたので、確認漏れや手戻りが起こりやすく、特に繁忙期には業務負荷が非常に高い状況でした。また、進捗管理のために基幹システムや外部ツールを併用していたため、入力の重複やミスが問題となっていました」(西海氏)
賃貸業務部
そうした課題の解決に向け、同社はさまざまな方法を模索し、2023年、進捗管理をSalesforceに一元化する方針とした。他のクラウドサービスの導入も選択肢として検討したが、目標とする内製構築の実現には専門知識と伴走支援が必須となることや、RPA連携に工数がかかることなど多くの問題が予想された。それに対してSalesforceなら、すでに全社導入済みのためデジタル戦略部で保守・運用でき、かつ各種システムと容易に連携できる。それらの優位性が決め手となった。
ただ、Salesforceを単体で業務に適用しようとすると、Excelに慣れている現場にとってはなじみのない画面やUIにより、利用が定着しないかもしれない、と同社は考えた。そんな中で出会ったのがRaySheetだった。
Salesforce + RaySheet導入前の課題
- 顧客管理システムがなく、顧客・商談情報が共有されない、議事録が残らないなどの課題があったため、2014年にSalesforceを全社導入した
- 原状回復工事に関する業務の進捗管理を一元化したいと考えたが、Salesforceを単体で業務に適用すると、不慣れな画面やUIにより利用が定着化しない恐れがあった
【選定】Excelと同様の使い勝手や権限設定の柔軟性が選定の決め手に。綿密な計画で利用定着化を促進
デジタル戦略部 次長の打田大輔氏は、取引先との日々の情報交換の中で、偶然RaySheetの存在を知ったという。
「『SalesforceをExcelのように使えて便利ですよ』と高評価だったので強く印象に残りました。それで、同様の機能を持ついくつかのソリューションと比較・検討した結果、Excelと同じような使い勝手や、管理者側で業務に合わせて権限を設定できる柔軟性などの面で、RaySheetが優れていると判断しました」(打田氏)
デジタル戦略部 次長
デジタル戦略部 主事の石井健太氏も、実際に初めて触ったときに同様の感想を抱いた、と話す。
「RaySheetはExcelとほぼ同じ操作性なので、使い始めのハードルは低く、すんなりとなじむことができました。これを活用すれば、慣れていない人でもSalesforceをスムーズに使えるようになると感じました」(石井氏)
デジタル戦略部 主事
2023年6月、Salesforceの活用範囲拡大とあわせてRaySheetの導入を開始した同社は、住宅運営部・賃貸業務部・住宅管理部・デジタル戦略部の合同チームを立ち上げてプロジェクトを推進。毎週の定例会において、まず業務の流れを理解・共有するために現状業務を整理し、Salesforceの操作を検証した。その上で、デジタル戦略部を中心に構築を開始し、同年12月にリリースまでこぎつけた。RaySheetのビューについては、西海氏が雛形を作成して各部署に配布し、現場でそれぞれの業務に合わせて自由にカスタマイズしてもらう方針とした。
同社は、SalesforceとRaySheetの社内での利用を定着させるため、さまざまな工夫を凝らした。住宅運営部 副主事の早川詩音氏はこう説明する。
「SalesforceとRaySheetに関して現場から上がってきた質問や疑問を書き留めて、定例会で共有して1つずつ検討し、各課会で回答したり、マニュアルを作成したりしました。また、迅速に利用を浸透させるため、業務フロー自体を『SalesforceとRaySheetを使わなければ進まない』というぐらいに大きく変え、使わざるを得ない状況をあえて生み出しました」(早川氏)
住宅運営部 副主事
一方で同社は、対外的にも、綿密な計画のもとに利用の定着化を進めていった。最初は、もっとも取引件数の多い気心の知れた外部の工事業者1社のみを対象に、スモールスタートで新システムを使い始めた。そして、要望や意見などをヒアリングしてシステムや業務フローに反映させながら、利用対象の業者を徐々に増やし、2024年5月に全工事業者への展開を完了させたのだ。
【効果】社内外で不可欠なコミュニケーション基盤となった“Salesforce✕RaySheet”
■ 進捗状況を可視化・共有化し、業務の効率性・正確性・即時性が向上
同社では、住宅運営部(関西支店を含む)・賃貸業務部・住宅管理部に所属する72名の担当者が、原状回復工事の進捗管理においてRaySheetの利用を開始。各担当者は、RaySheetのビューの一覧で工事進捗をリアルタイムに確認し、Excelのような感覚で一括して情報を更新できるようになった。
従来は、各担当者が週1回、工事進捗の報告資料をExcelで作成して課会で確認するという、時間と手間のかかる作業が必要だった。それに対して新システムでは、基幹システムに入力された情報を含め、Salesforceに連携・一元化された最新の情報が、RaySheetによって可視化・一覧化されている。さらに、担当者によっては個人フォルダを利用して、自分の担当物件だけを見やすく表示できるようにビューをカスタマイズし、業務効率化を図っている。RaySheet導入前後の変化について、早川氏はこう説明する。
「原状回復工事は、解約から次のお客様の入居までの間に完了させなければならないため、工事業者様による見積り、各担当者および社内の確認、オーナー様の確認、工事着工という一連のフローの所要時間をできるだけ短縮する必要があります。しかし以前は、週1回の報告資料でフローごとに進捗を確認していたので時間がかかり、すでに終わったことを確認してしまうなど、リアルタイム性に欠けていました。今は各案件のフローに滞りがないかを最新情報で随時確認し、必要に応じて督促などのアクションをすぐに起こせるようになっています」(早川氏)
住宅運営部・賃貸業務部・住宅管理部では、原状回復工事を進める裏で、解約された物件の新規入居者を募集する活動を行っている。そして、入居の申し込みがあった場合、従来はその情報を各担当者が確認し、入居希望日などの都合で工事を早めるなどの特記事項のある物件については、可視化して注意を促すため、人の手でExcelに色をつけるという、面倒な作業が必要だった。その点、現在では、RaySheetの条件付き書式によって、「申し込み」「工事金額XX万円以上」など、特定の単語の記載された物件のセルについては自動的に色づけされ、ひと目で認識できるようになっている。
「以前は申し込み情報の共有・確認が遅れ、危うく工事が間に合わないところだったなど、機会損失につながりかねない事態が発生していました。SalesforceとRaySheetによって、現場の担当者は、今自分のすべきことをすばやく確認できるようになり、一方で上席者は、業務に滞りがないかを管理者目線で正確に把握可能になりました。また、外部の工事業者様も、PCやモバイルからSalesforceを直接操作し、情報を確認・更新できるようになっています。全体として、情報共有や進捗確認、承認業務の効率性・正確性・即時性が大幅に向上しました」(西海氏)
■ メール作成時間を年間約183日分削減! 案件数の多い業務領域への展開でより大きな効果を期待
SalesforceとRaySheetの導入による効果は、さまざまな形で現れている。まず挙げられるのが、メールの作成・確認件数が大幅に減少したことだ。Salesforceに工事の進捗に関する特定の項目を入力すると、メールが自動送信される設定となったことで、進捗共有や資料送付を手動で行う必要がなくなったのだ。その定量効果について、打田氏は次のように試算する。
「原状回復工事に関して、以前は工事業者との間で年間約3万3000件のメールが飛び交っていました。その半分は当社側で作成していたわけですから、1通5分として年間約1,375時間、7.5時間労働とすると約183日。SalesforceとRaySheetの組み合わせによって、メール作成のみでもそれだけの時間を削減できたことになります」(打田氏)
同様に、業務上のやり取りがRaySheetで可視化されたことによって、会議用の報告資料をExcelで作成する必要もなくなった。担当者は、週1回1~2時間ほどかかっていた資料作成作業から解放され、より本質的な業務に時間を使えるようになった。また、担当者が会社を休んだり、進捗確認の会議が急遽日程変更になったりしても、RaySheetを見れば問題なく引き継ぎや確認を行えるようになった。
中でも大きな効果は、業務の遅延や滞留の状況をリアルタイムで見られるようになり、報告・承認・判断に要する時間を短縮できたことだ、と西海氏は評価する。
「たとえば、『お客様の退去から3営業日以内に工事業者様から見積りを出してもらう』という業務上のルールがあるのですが、以前はメールでのやり取りに時間がかかりすぎたり、見積りのメールを見落として重ねて督促したりしてしまうことがありました。RaySheetによって、情報を一元管理してタイムリーに把握し、リードタイムを短縮できたことが、私の業務では一番助かっている部分です」(西海氏)
SalesforceとRaySheetの導入による好影響は社外にも及んでいる、と早川氏はいう。
「導入の約半年後、外部の工事業者様16社を対象にアンケートを実施したところ、新システムの利便性や業務効率化などについて『非常に満足』という回答が多く寄せられました。業者様側と当社側で同じ画面を見ながら最新の情報を共有し、スムーズに、スピーディに仕事を進められるようになったメリットを実感していただけているのだと思います」(早川氏)
その言葉を受けて打田氏は、次の展開についてこう語る。
「現在、新システムを社外で利用しているのは工事業者様だけですが、今後はオーナー様やテナント様など、さまざまなステークホルダーの皆様に向けてSalesforceとRaySheetをセットで展開し、同じ情報を一緒に見られる便利なコミュニケーション基盤として提供していきたいと考えています」(打田氏)
社内においても同社は、原状回復工事の進捗管理の成果を踏まえ、RaySheetの活用範囲をさらに拡大していく方針だ。具体的には、修繕・点検・クレーム対応など、他の住宅管理領域への拡張を考えているという。
「今回の取り組みが軌道に乗って1年ほど経ち、まだ様子見の段階ですが、住宅管理領域の案件数は原状回復工事よりはるかに多いので、拡張を実現できればより大きな効果を見込めます。導入を検討中の方には、RaySheetはとっつきやすく、Salesforceの“かゆいところに手が届く”ツールだということを伝えたいですね」(西海氏)
Salesforce + RaySheetの導入効果
- 年間約1万6500件のメール作成が不要となり、年間約183日分の業務時間を削減できた
- 業務の遅延・滞留状況がリアルタイムに可視化されたことで、報告・承認・判断に要するリードタイムを短縮できた
- SalesforceとRaySheetをセットで展開し、社内外で同じ情報を一緒に見られるコミュニケーション基盤が整った