取材協力:2024.11
Excelライクな操作性で作業効率約40%向上
RaySheetが業務に欠かせない“心臓部”に
コマツ産機株式会社様
※ 事例記事の内容や担当者所属は取材当時のものです。最新の情報と異なる場合がございますのでご了承ください。
プレス機械や板金機械などの産業機械を提供するコマツ産機株式会社は、次世代の経営の柱としてDX戦略を推進し、その一環としてSalesforceの活用拡大に取り組んできた。ただ、Salesforceの利用定着が進むにつれ、扱う案件・データの量は増え、Salesforceの操作性と入力効率の改善を迫られるようになった。そうした課題の解決策として、同社はRaySheetを導入。その利便性を活かし、見積作成やプロジェクト管理など、さまざまな業務を改革していった。RaySheetの導入経緯や活用法、成果などについて、コマツ産機株式会社 ICTビジネス推進室 Salesforceグループ グループ長の折坂志郎氏、および同グループの羽鳥治氏にお話をうかがった。
【課題】データ入力効率化と利用定着化のためSalesforceの操作性向上が必須に
コマツグループの一員として石川県金沢市に本社を置き、プレス機械や板金機械、溶接ロボットなどの開発・生産・販売・アフターサービスを行うコマツ産機株式会社。同社の提供する産業機械は、スマートフォンの部品から自動車のボディパネル、橋梁部品まで、大小さまざまな製品を構成する部品の成形に利用されている。
同社は2024年、コマツのプレス機械第1号の市販開始からちょうど100年となる記念の年を迎えた。そうした中で同社は近年、次の100年につながる経営の柱としてDX戦略を重視し、イノベーションや事業改革、構造改革に取り組んできた。そして、その一環として特に力を注いできたのが、Salesforceの活用拡大だ。
同社は2012年、顧客・商談情報の共有・管理を徹底する目的でSalesforceを導入し、2017年に営業マネジメントをSalesforce上で完結させる業務改革に着手。2019年にSalesforce Classic からSalesforce Lightningへ移行したことを機に、商談に関連する業務や帳票の約8割をSalesforceに組み込んでペーパーレス化を実現した。さらに2021年には、Salesforceの利用範囲をサービス部門にも広げ、商談管理や見積作成、売上計上、請求書発行などで活用するようになった。
そのようにSalesforceを順調に展開していった同社。一方、その過程で新たな課題が見えてきた。Salesforce上で扱う案件やデータの量の増加にともない、Salesforceの操作性と入力効率の改善が求められるようになったのだ。
たとえば、同社の大型機械を扱う事業領域の営業活動では、1件の商談で10~20点もの商品を取り扱い、顧客との打ち合わせを通じて仕様や価格などを細かく調整していく。その際、大量の商品の編集を一括して行う場面が多々あるが、Salesforceの標準画面だと操作性の問題により時間と手間がかかる。そのため、商品の明細については、営業担当者によってExcelなどで別途編集・管理され、情報としてSalesforceに蓄積されないという問題があった。また、そのようにExcelを併用し続けることは、Salesforceの利用定着化の阻害要因にもなっていた。ICTビジネス推進室 Salesforceグループ グループ長の折坂志郎氏はいう。
ICTビジネス推進室
Salesforceグループ グループ長
「Salesforceの利用を推進するからには、ユーザーに便利だと感じてもらえる環境を用意したいと考え、Excelの使い勝手とSalesforceのよさを同時に活かす方法をいろいろと模索しました」(折坂氏)
Salesforce + RaySheet導入前の課題
- Salesforceで扱う案件・データ量の増加にともない、操作性と入力効率の低さが問題となった
- 見積書などを個別にExcelで編集・管理していたため、Salesforceに情報が蓄積されなかった
- Excelを併用することが、Salesforceの利用定着化の阻害要因となっていた
【選定】Excel同様の使い勝手、Salesforceの入力ルールで正しい情報を蓄積できる点を評価
そうした中で同社は、Salesforceの担当エンジニアの紹介でRaySheetの存在を知った。早速トライアル版を使ってみたところ、想像以上に使い勝手がよかった、と折坂氏は振り返る。
「Salesforceの商談の画面に違和感なくExcelのような画面を埋め込むことができ、権限やフィルタなどの設定も非常に簡単でした。試用した現場の営業担当者からも『これなら使える』という声が寄せられました」(折坂氏)
実はそれ以前に同社は、課題解決の方策の1つとして、Salesforceの画面を作成するためのフレームワークであるVisualforceを利用し、一括編集の機能を自社で開発していた。しかし、項目を1つ追加するだけでも、管理者がSandboxとSQLを使用して項目を作成し、検証環境でテストするという、手間のかかる工程を経なければならなかった。それに対してRaySheetなら、ユーザー自身が画面上でドラッグ&ドロップし、瞬時に項目を作成することができる。
「加えてRaySheetには、単にSalesforce上のデータをExcelのように編集できるだけでなく、Salesforceの入力規則を使えるという利点もあります。情報が自動的にSalesforceのルールに沿って入力され、内部処理で連携されるので、使い勝手の向上という利用部門のニーズに応えると同時に、正しい情報を蓄積するという管理部門の要望も満たせるわけです」(折坂氏)
さらに、RaySheetが当時まだ希少だったSalesforce Lightning対応のAppExchangeアプリであったことも導入の後押しになった、と折坂氏は話す。
ICTビジネス推進室
Salesforceグループ
【効果】「これなしの環境には戻れない」RaySheetとSalesforceが業務の“心臓部”に
■ 営業部門での利用定着を受けサービス部門にも展開、見積作成の作業効率を大幅効率化
そうした経緯でRaySheetを導入した同社は、最初に営業部門における商談商品の一括編集から利用を開始した。新たなツールへの移行は非常にスムーズだった、と折坂氏はいう。
「RaySheetは従来のSalesforceのレイアウトのままの画面に組み込まれ、Excelと同様に直接編集できます。そのため、使い方を繰り返し説明したり、定着に苦労したりすることなく、皆が自然に使い始めました。Salesforceに慣れていれば、特になにも意識せずに使えるという印象でした」(折坂氏)
営業部門でRaySheetの活用が順調に進んだことを受け、同社は利用範囲をサービス部門にも拡大した。それによって、作業効率の大幅な向上に成功したのが、見積作成だ。
サービス部門では、工事に使う部品の品名や価格を見積書に記入する。従来、多いときには1案件で100点にのぼる部品を1品番ずつ価格表で調べ、手動で転記するという煩雑な作業が必要だった。
RaySheetは、そのように膨大な数の部品の明細の編集をSalesforceの画面上で一括して行うことが可能だ。また、Salesforceにインストールされている部品マスタを参照し、品番を入力するだけで価格などの明細を自動転記することができる。ICTビジネス推進室 Salesforceグループの羽鳥治氏は、サービス部門で業務に従事していたときにRaySheetを利用し、利便性の高さを実感したという。
「当社には海外にも拠点があり、それぞれ現地の販売価格で部品を1つひとつ計算するのが大変でした。RaySheet導入後、Salesforceとの連携によって価格を自動的に算出・転記できるようになり、本当に助かりました」(羽鳥氏)
■ 高い検索性・閲覧性でプロジェクト管理・見積草稿作成の部門間連携に寄与
RaySheetは、情報の検索性の向上にも一役買っている。サービス部門では、新たな設計業務の必要な工事が発生したとき、設計部門に部品の図面の制作を依頼する。それを受けて設計者は、Salesforceのプロジェクト管理画面で、設計の要件や進捗を確認する。その際にRaySheetは、設計者の管理したいさまざまな検索条件を自由に設定・保存できることで、情報の検索性を大幅に高めているのだ。
「サービス・設計・生産の各部門を連携させ、部品制作の進捗をSalesforceで管理・共有するというのは、RaySheetの高い検索性があってはじめて実現できたことです。RaySheetを導入しなければ、そもそもそういうアイデアが浮かんでくることすらなかったかもしれません」(折坂氏)
同社ではまた、設計部門が営業部門に伝えるための見積の原価を算出して作成する「見積草稿」においても、RaySheetの特性を有効活用するようになった。設計部門では従来、1つのプロジェクトに対して、メカニック系と制御系の設計者がそれぞれ見積草稿をExcelで作成して、依頼元である営業部門へバラバラに通知し、最終的に1つに統合していた。そのため、プロジェクト全体で見たときの見積や進捗がわかりにくい、という問題があった。
RaySheetによって、そのように個別に作成・管理されていた見積草稿をSalesforce上で関連づけ、閲覧性を持たせながらExcelライクに編集・管理できるようになったのだ。
「見積草稿のデータはSalesforceに蓄積されるので、新たに見積草稿を作成する際、過去の実績を参照し、価格などを自動入力することが可能です。また、Salesforceの画面に埋め込んだRaySheetの検索バーで、日付や範囲を絞って品番を検索することで、過去の見積を参照しながら簡単に価格を決めることができます」(折坂氏)
RaySheetには、単にデータを一覧化するだけでなく、ピボット集計の機能も備わっている。同社では、それを商談などの予実管理において活用している。ピボット集計はSalesforceのレポートやダッシュボードでも可能だが、RaySheetには独自の使いやすさがある、と折坂氏は指摘する。
「たとえば、計画値を変更したいとき、数字をクリックするとその元データや責任者名が表示され、それらを確認しながら直接編集できます。以前は、マネージャーから計画値を聞いて集計し、システム部門でSalesforceのデータに変換して入力するという、大変な作業が必要でした。しかし今は、権限を与えられたマネージャー自身が、いつでも手軽に変更できます」(折坂氏)
同様に設計部門では、見積や設計の進捗をRaySheetの埋め込まれたスケジュール管理画面でマネジメントするようになった。設計部門の会議では、ExcelやPowerPointによる集計をやめ、この管理画面だけで進捗を確認し、そこからSalesforceの得意とするダッシュボードでの分析につなげているという。
■ RaySheetによる業務効率化が営業部門の活動数40%増に貢献
RaySheetの導入による定量的な効果について、羽鳥氏は次のように説明する。
「たとえばサービス部門での見積作成において、従来は部品の価格を調べて転記するのに1品番あたり約15秒、100品番だと約25分かかっていました。今は品番のリストさえあればコピー&ペーストするだけ、ものの数秒で見積書を作成できます。そのように直感的な操作性や情報転記の自動化を実現したことで、関連業務の作業効率は約40%向上しました。また、見積書の作成が簡単になり、見積依頼を気軽に行えるようになったことで、見積の作成件数や依頼件数は体感値で20~30%増加しました」(羽鳥氏)
一方、折坂氏は、あくまで事業改革や業務改革と一体となった効果であるとしながらも、RaySheet導入後、営業部門の活動数は約40%増加した、と話す。
「RaySheetの使い勝手のよさによって業務の生産性が上がり、その分だけお客様と向き合う時間を取れるようになった側面はあると思います。RaySheetとSalesforceは、今では当社の業務の“心臓部”となっており、営業部門やサービス部門からは、『これなしの環境にはもう戻れない』という声ととともに、RaySheetによる業務の改善提案が日々届いています。そうした業務・プロセス変革を自由に提言する風土を確立できたことが、RaySheet導入による最大の成果だと考えています」(折坂氏)
同社のDX推進に長年携わってきた折坂氏は、RaySheetを活用した今後の展開について最後にこう語った。
「メシウスのWebサイトで他社の事例を見ると、RaySheetにはまだ当社の活用できていない機能がたくさんあると感じます。Salesforceのオブジェクトをまたいだ進捗管理に利用できる『複数オブジェクトの比較表示』や、予実管理においてRaySheet自身で集計の条件を決められる『カスタム集計』など、新たな機能をどんどん取り入れていきたいと思います。また、書式設定の作り込みなど、ビジュアル面にも改善の余地はまだまだあるので、RaySheetをさらに使いこなし、Salesforceをより見やすく、使いやすくする活動を続けたいと考えています」(折坂氏)
Salesforce + RaySheetの導入効果
- Salesforce上でExcelと同様に見積の一括編集が可能になり、作業が大幅に効率化
- 高い検索性・閲覧性により、部門間で連携したプロジェクト管理・見積草稿作成が可能に
- 営業部門の活動数40%増に寄与するなどの成果を挙げ、業務変革を自由に提言する風土を醸成