取材協力:2022.3
加盟店の急増でGoogleスプレッドシートでの管理が限界に
Salesforce上で使いやすい進捗管理プロセスを実現したRaySheet
株式会社出前館様
※ 事例記事の内容や担当者所属は取材当時のものです。最新の情報と異なる場合がございますのでご了承ください。
10万店を超える加盟店(※ 2021年12月時点)が利用するデリバリー総合サイト「出前館」を運営する株式会社出前館では、出店社の登録業務のプロセス管理にSalesforceを活用しており、その進捗管理のインターフェースとしてグレープシティが提供するRaySheetを活用しています。その経緯について、営業本部セールスオペレーション部 部長 蜂巣 稔幸氏および同部 出店サポートチーム 塩原 孝祐氏にお話を伺いました。
【課題】加盟店舗が5倍に急増、Googleスプレッドシートへの移行でも課題が顕在化
「テクノロジーで時間価値を高める」をコーポレートミッションに据え、フードデリバリー市場において事業を展開する株式会社出前館。10万を超える全国の飲食店からデリバリーが注文できるデリバリー総合サイト「出前館」を中心に、デリバリー・テイクアウト用容器や資材通販を手掛ける仕入館の運営、デリバリー機能を持たない店舗へ配達網を提供するシェアリングデリバリー®など、フードデリバリーに関連した各種事業を展開。専任の品質管理チームが配達クルーの監督・指導を徹底することで“キレイに配達”するなどサービス品質向上に取り組んでおり、インターネットとの親和性が高い若年層はもちろん、シニア層のユーザも数多く獲得しています。
そんな同社では、2020年に行われたLINE株式会社との資本業務提携を契機に、従来から手掛けてきた自社配達が可能な店舗への送客業務を生かしながら、配達の仕組みを持たない加盟店でもデリバリーが可能になる配達代行サービスを中心としたビジネスモデルも実現。その結果、数年前に比べて同社の加盟店は5倍以上に膨れ上がり、月額の出店ペースも急増することに。「サイトへ加盟店の情報を掲載するための進捗管理をExcelにて行ってきたものの、急速な事業拡大のなかで、いずれ限界が来ることは容易に想定できました。新型コロナウイルス感染症の影響もあって出店店舗数がさらに伸びるなか、システム化に向けた環境整備が急務となったのです」と蜂巣氏は当時を振り返ります。
営業本部
セールスオペレーション部 部長
実は、加盟する店舗数の急増で大量のアシスタントを採用した際に、メンバー間で情報共有できるGoogleスプレッドシートへの切り替えを実施し、業務プロセスを改善しながら何とか急場をしのいできたという経緯があります。しかし、情報の削除や誤った情報の上書きなど、運用上の懸念点がありました。「Googleスプレッドシートで1万件以上の件数を表示しようとすると、画面を開くだけでも多くの時間が必要です。作業に入るまでに時間がかかるなど、操作の面でも課題が顕在化していたのです」と塩原氏。そこで、新たな環境に移行することを決めました。
Salesforce導入前と導入後の課題
- 出店希望が急拡大したため、ファイルでの管理ではオープン対応の進捗管理が追いつかない
- 新規ビジネスのため、業務フローが確定せず大掛かりなシステムは導入できない
- アルバイトスタッフも多いため、教育に手がかからないシンプルなシステムが必要
【選定】大掛かりなシステム投資せずに利用できるSalesforceとRaySheetが最良の選択
新たな基盤づくりに際しては、大掛かりなシステム化については避けたいと考えていました。今後の事業戦略において、将来的に期待されるリテール領域も含めた事業拡大を視野に入れた場合、さらなる出店数の拡大に向けて現状の業務フローを改善し続けていく必要があるからです。「業務フローが固まっていない現段階で大掛かりなシステム導入は難しい部分もありました。将来的なことも考慮すると、現段階では既存のスプレッドシート運用を続けながら、消去や上書きなどが回避できる、データの保全性を高めていく仕組みが必要だと考えたのです」と蜂巣氏。
そこで検討したのが、営業支援として社内展開が進んでいたSalesforceでした。「Salesforce上に登録されている商談管理の情報を、そのまま進行管理の案件情報に活用できる環境が得策だと思いました。また、将来的にはコールセンター業務にも展開していくことで情報が一元管理できると考えたのです」と蜂巣氏。ただし、現場への展開がスムーズに実施できるよう、Googleスプレッドシートの使い勝手そのままにSalesforceの基盤に移行できる環境を検討することに。「入力する多くのアシスタントがスムーズにSalesforceへ移行できるよう、従来の使い勝手が維持できるExcelライクなインターフェースを希望したのです」と塩原氏。
営業本部
セールスオペレーション部 出店サポートチーム
以前Curlを駆使してExcelライクなインターフェースを開発した経験を持つ蜂巣氏でしたが、自前で開発するとRDBの準備も含めてシステム部門の力を借りざるを得ず、サイトへ優先的に投資するステージにある同社にとっては、業務領域にエンジニアを調達しづらい状況もありました。そこで、Salesforceにかぶせる形で使えるものがないか探したところ、グレープシティのRaySheetにたどり着いたそうです。「大勢いるアシスタントの教育コストを考えると、プロセスを大きく変更せずに移植できるRaySheetは大きなメリットがありました。月額のライセンスで利用できる点からも我々にとって合理的な選択だったのです」と蜂巣氏。
結果として、加盟店の掲載に必要な進捗・タスク管理の基盤として、SalesforceとRaySheetを組み合わせた環境を整備することになりました。
【効果】現場に負担をかけずにSalesforceへの移行を可能にしたRaySheet
■ ページ制作前工程と制作後工程の2つのプロセスをRaySheetにて管理
現在同サイトに新規に登録される店舗数は月間で数千件ほどに達しており、それぞれサイト掲載するまでの進捗管理をSalesforce上のRaySheetで行っています。RaySheet自体は180ほどのライセンス数で契約しており、サイト掲載に必要な手続きの進捗管理を行う出店チームを中心に25名ほどがRaySheetを利用しています。出店チームでは、営業が受注したあとに出前館のWebサイトに店舗情報を掲載するためのプロセスを管理するデータ案件シートとともに、ページ制作が終わった段階から最終的なサービス開始までのプロセスを管理するオープン対応シートと呼ばれるアプリを運用しており、ページ制作前工程と制作後工程の2つのプロセスをRaySheetにて管理しています。
進捗管理に必要な店舗情報は、営業部門が運用するSalesforce内で管理されている見込み客のリストを利用し、受注した段階でRaySheet上のデータ案件シートに店舗情報が入るようになっています。その段階でアシスタントリーダーによって担当者の割り振りが行われ、その担当者が店舗とやり取りしながら掲載までの進捗管理をRaySheetで行っていきます。「基本情報や商品画像、メニュー表など入稿に必要な情報の有無を確認し、申込書など必要種類が揃った段階で次の工程に進んでいくことになりますが、その進捗が一目でわかるようになっています。全ての情報が揃った段階で、ページ制作チームに依頼することになります」と蜂巣氏。ページ制作が終わった後は、オープン対応シート上で店舗に設置するタブレットの貸し出しやアプリのインストール、注文情報がきちんと届くかどうかのテストなど、デリバリサービスを開始するために必要なプロセスの進捗管理が行われている。
■ 全体で5人月の工数を削減、正確かつ効率的な進捗管理が可能に
RaySheetを活用することで、従来のスプレッドシートでの管理と比べ情報管理の精度は大きく向上しているそうです。例えば、電話番号などはハイフンがないと入力できないといった入力規則を設けることで入力漏れや表記ゆれが解消できるようになったとのこと、「以前は、意図しない更新や入力漏れなどに対処するため、多くの時間をかけて修正せざるを得ないこともありましたが、情報が正確に登録、管理できるようになったことで、私の方で情報のメンテナンスすることもなくなっています」と塩原氏は高く評価する。
また、Googleスプレッドシートでは1万を超える件数の表示に5分ほどかかることもあったが、RaySheetであれば5分の1以下の時間で作業に入ることができるようになったそうです。「RaySheetであればページの表示内容を自分たちで変更することで素早く表示できるようになっています。インポート機能を使えば、他のシステムから取得したCSVからコピー&ペーストで情報更新することも可能ですし、検索機能のおかげで必要な情報にたどり着きやすい」と塩原氏。
さらに、以前は管理対象ごとにシートを分けて同じ情報を入力することも多かったそうですが、今はSalesforceからデータを参照できるため、店舗コードなどを二重に入力する必要がなくなるなど転記ミスや入力負担の軽減に大きく貢献。「二重入力がなくなることでシートへの反映が容易になり、全体のプロセスが大きく効率化されています。さまざまな工数が削減できたことで、全体的には5人月ぐらいの工数が削減できているはずです」と塩原氏は評価します。
SalesforceおよびRaySheetで進捗管理できるようになったことで、処理件数の遅延や滞留件数などが随時モニタリングできるようになったことも大きなポイントです。「月次の着地が予測しやすく、アルバイト個別の生産性などから評価につなげるなど、管理面での効果も見逃せない」と蜂巣氏。ExcelライクなRaySheetのおかげで、現場に負担をかけずともスムーズに移行できていることも、教育コストの面で大きな効果があるという。「アルバイトの方は当然ながら入れ替わりが多く、詳細に説明せずとも直感的に作業できるのは非常に大きい。実際に作業するアルバイトの方を中心に業務フローが設計できており、教育コストをかけずに継続的な進捗管理が可能になっています」と塩原氏。
■ 店舗へのレンタル品管理やさらなるプロセス管理の拡充にも期待
今後については、出店している店舗にレンタルしているタブレットの管理などにもRaySheetを役立てていきたいとのこと。「掲載開始までのプロセス内で、店舗からのタブレットレンタル依頼も受け付けています。今はExcelで個別に実施していますが、いずれはタブレットのキッティング指示やシリアル管理、出荷・返却管理もRaySheetにて管理していこうと考えています」と蜂巣氏。
また、現状はページ制作前と制作後のプロセスを管理していますが、ページ制作自体の工程管理も同じ基盤のなかで管理できるような仕組みづくりにも期待を寄せているという。「ページ自体を加盟店側で作成できるようなセルフオンボーディングなどに向けた環境づくりを進めていくのであれば、Salesforceとは異なるプロダクトで実装してくことも検討していくことになるでしょうが、どこまで社内システムと連携させていくのかについて議論しながら、予算の兼ね合いや加盟店の利便性を考慮したうえで決定していきたいところです」と蜂巣氏。
Salesforce活用シーンの広がりは今後も期待できるという。「部門横断的に営業部門と情報共有しながら加盟店管理に紐づけていくなど、Salesforceのオブジェクトコードを適正な情報として幅広く利用できる点は間違いなくあります。例えば加盟いただいた店舗が利用するキャンペーンなども店舗情報を軸に管理していくことで、加盟後の店舗に対するLTV向上にも役立てていけるはず」と蜂巣氏。そのあたりも含めて、SalesforceおよびRaySheetに集約していきたいと 今後について語っていただきました。
RaySheetの導入効果
- Salesforce内の商談情報から取引先データを再利用できるため、入力工数を大幅に削減
- Excelと同じ使い方のため、スタッフが入れ替わっても理解が早く教育コストがかからない
- ビジネスが拡大しても、Salesforce内にデータを集約でき業務全体を一元管理しやすい